Wi-Fiルーターの選び方~MU-MIMO?~

新生活に向けた引っ越し先でネット環境を用意したり
自宅であっても進学した子供がスマホを持つようになったりと
春は色々と環境の変化がある季節だと思います。
こんな時期は今使っているWi-Fiルーターを見直すのに丁度良いタイミングです。

今回はWi-Fiルーターの選び方についてのご紹介となります。

昔と今ではWi-Fiに繋がる機器の数が違う

昔と今では大きく違う点が一つあります。

かつてはWi-Fi接続をしたい機器はノートパソコンくらいでした。
一般家庭であれば一家に一台、あっても一人一台くらいです。

時は流れ、現代は誰しもがスマホを持つようになりました。
それだけならパソコンがスマホに置き換わっただけという家庭もあるでしょう。
しかしプリンタもWi-Fi、TVもWi-Fi、レコーダーもWi-Fi、ゲーム機もWi-Fi、デジカメもWi-Fi、ビデオカメラもWi-Fi

子供やペットの様子を見守るネットワークカメラもWi-Fi
LED電球もWi-Fiに繋がりますし、体重計もWi-Fiに繋がります。
果てはペットに自動でエサをやる自動給餌器もWi-Fi接続ができます。
※これらはすべてWi-Fiに接続出来る製品に限ります。

パソコンくらいしか繋がなかった昔と
あらゆる機器がWi-Fiに繋がる今とでは
環境が大きく変わった事がおわかりいただけたでしょうか?

繋がれば良いだけの時代はとっくに過ぎた

一般家庭でWi-Fiに繋がる機器が増えた現状
使う環境によって適切なWi-Fiルーターを選ばないと
ただ繋がれば良いというのは、速度が遅くても良いと言っているのと同じです。

PC、スマホ、TVをWi-Fiに繋げていると、どれも同時に通信しているように感じます。
しかし、実際には各端末が交代で通信を行っています。

例えばスマホでWEBページを表示したとします。
その間はPCもTVもスマホの邪魔にならないように通信を待機しています。
同時に通信してしまうと、複数の電波が干渉して正常に通信できなくなるからです。

実際にはスマホにデータを少し送ったら、PCにも少し送り、TVにも少し送るようにして
短時間で通信する機器を切り替えているため、同時接続しているように見せかけている状態です。

その為、同時に接続する機器が増えすぎると
切り替える台数が増えるので通信速度が低下します。

SU-MIMOからMU-MIMOへ

一対一で切り替えて通信を行うのはSU-MIMOと言います。
それに対して、複数端末の同時通信を実現したのがMU-MIMOです。

SU-MIMOとかMU-MIMOとか文字だけで見ると何の事か分かりませんが
SUはシングルユーザー、MUはマルチユーザーの事だと分かれば理解しやすくなります。

「MUーMIMO」は、特定の端末に向けて電波を発信する「ビームフォーミング」技術を使った機能です。
「ビームフォーミング」と融合することで、電波干渉が起きないよう位相をずらして
複数の信号波を送る「空間多重」による通信を実現。
複数の端末に別々のデータを送る“1対多”の同時通信を可能にしました。

Aterm 11acのキーテクノロジーより引用

MU-MIMOは空間多重による通信で、電波干渉が起きないようにしています。
空間多重と聞くと何だか聞き慣れない単語で凄そうだとしかわかりませんが
とってもわかりやすいgifをAtermさんが作成してくれています。

・SU-MIMOの場合(順番に通信)

SU-MIMO

Aterm 11acのキーテクノロジーより引用

上の図はSU-MIMO。
3台繋げた場合、順番に通信しているのがよくわかります。
台数が増えれば増えるほど、通信速度が低下するのは
タイミングをずらして通信するので、ほんの少しのタイムラグが積み重なるからです。

 

・MU-MIMOの場合(同時に通信)
MU-MIMO

Aterm 11acのキーテクノロジーより引用

こちらはMU-MIMO。
空間多重がこの図を見ればどうなっているかわかると思います。
実際の電波には色が付いていませんが
この図では青い電波は上緑の電波は真ん中赤い電波は下から通信されています。
MU-MIMOはそれぞれの電波が干渉しないように
空間をずらして通信しているのがわかりやすくなっています。

端末もMU-MIMOに対応している必要がある

大変残念なお知らせがあります。
MU-MIMOで同時通信できると思っても
Wi-Fiルーターだけでは意味がありません。
端末もMU-MIMOに対応している必要があります。

もしかするとお使いの端末はMU-MIMOに対応していないかもしれません。

細かい事を言うとMU-MIMO端末が1台ある程度では意味がないので
MU-MIMO端末を複数台所持した時に真価を発揮します。

ただ、こうした業界の技術の進歩は早いです。
現に一部のスマートフォン、一部のノートパソコンはMU-MIMOに対応しています。
今使っている機器を買い替える必要性が出た時には
MU-MIMO対応の端末を新しく購入している可能性もあります。

古くなったWi-Fiルーターを買い替える時期になっていれば
今現在MU-MIMO対応端末を持っていなかったとしても
MU-MIMO対応のWi-Fiルーターを購入して無駄にはならないはずです。

ストリーム数(アンテナ)は多い方がいいの?

今使っているスマホが2ストリームしか対応していないので
4ストリームや3ストリームはいらないと考える方もいるかもしれません。

実際4ストリーム対応した端末はそうないので
オーバースペックな面もあります。

しかし、多くのアンテナがあるタイプは上位モデルである事が多く
処理能力が高いCPUが搭載されており、これが速度に大きく影響してきます。

iperfを使用しての測定

INTERNETWatch iPerf(UDP)を使用して計測より引用

こちらの図はINTERNETWatchさんがテストルームで行った測定結果です。
上からWG2600HPが4ストリーム、WG1800HP2が3ストリーム
WG1200HPが2ストリーム、WF800HPが1ストリームWi-Fiルーターの結果となっています。

接続するスマートフォンGalaxyS6は2ストリームです。
スペック的には2ストリームのルーターで十分です。
しかし上記の図を見ればわかる通り、1台しかスマホを接続しない場合でも
2ストリームのWG1200HPは409Mbpsとなっており
3ストリームのWG1800HP2は460Mbpsと409mbpsを上回り
4ストリームのWG2600HPは525mbpsと更に高い。
これを見るとストリーム数が多い方が高速という結果になっています。

接続するスマホが3台同時、4台同時と増えていくごとに
更にその差が広がっていくのがわかります。

今や家族全員がスマホを持っていて
帰宅したら3台、4台スマホがWi-Fiに繋がっているというのは
そう珍しい状況ではないでしょう。

上記の図は専用のテストルームでの結果なので
実際の家庭で使う場合は、床や壁、障害物、電波の干渉などを考えねばなりません。
そうなると実際の住環境では実効速度は半分になる場合もあります。

一人暮らしでスマホ1台くらいしか繋ぐ予定がないという人はともかく
家族全員がスマホを持っていて、パソコンやTV、ゲーム機もWi-Fiで繋いで同時に使っている
そんな家庭であれば、処理能力の高い上位のWi-Fiルーターを設置を考えてみても良いでしょう。

ただ、上記のテストは2015年に行われたものです。
現代の進歩した製品であれば、また違う結果になっているかもしれません。
しかしながらハイエンド、ローエンドとラインナップがある以上
ローエンドが進化すれば、ハイエンドも進化しています。
それはWi-Fiルーターだけでなく、スマホなどの端末も同じです。

Wi-Fiなんて繋がれば何でもいいという時代は終わりました。
ご家庭で使用しているWi-Fi機器の台数や使用状況を把握し
快適に使えるWi-Fiルーターを選ぶ時代になったと言えましょう。

番外編:違う階に電波を飛ばしたい場合

1階から2階にWi-Fiを飛ばしているが弱い
また逆に2階から1階へ飛ばしたいが届かない
そんなご相談を頂く事がよくあります。

結論から言えば、1台で階をまたいで届かせるというのは
床や壁の材質に大きく影響されます。
今使っているルーターの電波が届かないのであれば
新しいルーターの電波も届かないかもしれません。
電波が届かない、弱い原因はルーターではなく
住環境に原因がある事もよくあるからです。

もちろん、古いルーターを使っている環境であれば
新しいルーターに搭載されているアンテナや新技術により
買い替えれば届きやすくなる可能性はあります。

しかし床や壁が問題で届かない環境であれば
中継機を用意するか、理想を言えば有線を引っ張ってきて
各階にWi-Fiルーターを設置した方が安定すると言えます。
もちろん、古いルーターを使っている場合は
新しく買い替えた上で、中継機などを用意しましょう。

メーカー側もWi-Fiルーターのパッケージにマンションなら何LDK程度
木造なら何階立てといった目安を出していますが
電波が何メートル飛んで、どれくらいの広さをカバーできるかといった
具体的な数字は出していない事が多いです。
それは同じ広さの家でも材質、家具の配置、壁の厚みなど状況が異なる為
断言する事ができないからです。

我々もメーカーと同じように
これを買えば電波が家の隅々まで届きますよと断言できません。
実際に現地で設置してみてダメだとわかる環境もあります。
中継機を設置すればいける環境もあります。
有線を引く必要がある環境もあります。

接続する台数、設置する環境どちらも大切な事なので
Wi-Fiルーターを購入する前に、ご自宅の利用環境を見つめ直して頂けたらと思います。