商工会名簿の押し売り事件
ある会社役員の方より、次のような相談がありました。
その方が不在のある日、60才前後の女性が来社し「徳島商工会議所です。2000円いただきます」と言って、特定商工業者名簿をカウンターに置いて2000円を徴収していきました。
しかしその会社は徳島市商工会の会員にもなっていないし、名簿の購入を了承したこともありません。
買う意志がない者に対して無理やり売りつけることは (俗にいう押し売り)法律で禁止されており、刑法223条の強要罪に該当します。
被害にあった役員さんに対して「間違ってお金を支払っても、クーリングオフ制度がありますので、連絡を取って返金してもらいましょう。」とアドバイスをしました。
徳島市商工会議所より徴収のために派遣された女性には訪問販売に必要な素養(法律の知識、クーリングオフ制度の説明など)が足りないように思われます。
商工会議所は商いの模範(信頼性と誠実、法令と規制の順守など)を示す立場にあり、説明もなく、有無を言わせずお金を徴収すような訪問販売はやめるべきです。さらに長年にわたり違法行為を繰り返し行ったことを強く反省しなければなりません。
なお売りつけられた特定商工業名簿は辞書を少し大きくした400ページぐらいの本で、業者の住所、電話番号、代表者名、取引銀行)などが掲載されています。
しかし昨今、スマホでは会社名などを読み上げると住所、電話番号などが即座に表示されます。ホームページがあれば名簿の情報より多くの情報が得られるはずです。ですから、特定商工業名簿を購入した(売りつけられた)方のほとんどが利用していないと思われます。
ところで、国、徳島県は省資源化やペーパーレス化を積極的に進めています。例えば徳島県議会は年間40万枚の紙の削減に成功したようです。紙資源の消費を減らし、廃棄された紙を燃やす際に出るCO2量の減少、紙の原料となる木材、森林の保護にもつながります。
徳島市商工会議所でも率先してペーパーレス化を進め、役に立ちそうもない特定商工業者名簿の販売をやめるべきです。
<補足>
特定商工業者とは、商工会議所の会員・非会員を問わず、商工会議所法で指定された条件「資本金額(払込済出資総額)が300万円以上」または「営業所等の従業員数が20人(商業・サービス業は5人)以上」に該当する商工業者の方です。つまり法律に定められています。
なお、特定商工業者として、法定台帳に登録されただけでは商工会議所の会員ではありません。
商工会議所の会員は、自由意思によって加入し、商工会議所の諸事業を活用することで、事業の安定や拡大を図ることができます。
一方、商工会議所は法定台帳を作成する義務があり、その法定台帳を作成するための経費をまかなうために、特定商工業者に負担をお願いすることができます。
また、この負担金は、特定商工業者の同意がないと徴収することができません。
「特定商工業者の負担金」については、義務ではなく、罰則もありません。
負担金を支払うかどうか、名簿を購入するかどうかはそれぞれの会社の判断となります。