Wi-Fi 6 を大雑把に解説
最近話題のWi-Fi 6 を大雑把に解説します。
技術的な詳細はあんまり語りませんが、なんとなく解ればと思います。
それなのになかなかの長編ですので一応最初に目次的なリンクを置いておきます。
Wi-Fi 6(ワイファイ シックス)とは
かんたんに言えば、最新のWi-Fi規格のことです。
今やパソコンやスマホ、ゲーム機やスマート家電など、様々な機器で欠かせないWi-Fiですが、これまでにも新たな規格が度々登場してきました。
種類が多くなってきたので分かりやすくするため、パソコンのCPUや移動体通信(スマホ)の電波などによく用いられる「第〇世代」になぞらえて、世代を表す数字を付けることになりました。
すなわちWi-Fi 6とは、第6世代のWi-Fiということです。
それにともない二つ前までの世代もWi-Fi 5、Wi-Fi 4ということになりました。
しかし、なぜかそれ以前の世代のWi-Fiについては、特に数字はつけられておりません。
Wi-Fi 3とかWi-Fi 2とかにはなっておらず、既に現行のものではないと判断されたためでしょうか。
Wi-Fi(ワイファイ)とは
かんたんに言えば、無線LANの接続保証の認定証です。
無線LANは1997年頃に登場してきましたが、当時は同一メーカーの製品であっても、製品の種類や発売時期により細かな仕様が異なっていたりして接続ができなかったりするものでした。
そこで2000年代初頭より、無線LANの普及を目的に発足した団体により相互接続を保証するために認定された製品に対し、Wi-Fi CERTIFIEDマークが与えられることとなり、今日では単にWi-Fi(ワイファイ)と呼ばれるようになりました。
したがって、この団体に認定されていない無線LANの機器は、正確にはWi-Fiではありません。
ちなみに身近なところでは、ニンテンドーDS・ニンテンドーDS Liteは実は認定を受けていないそうですが、そんなニンテンドーDSでもつながるWi-Fiルーターに、相性でつながらないWi-Fi端末もあったりして、もう何が何やらって感じですね、はぁ。

Wi-Fi CERTIFIEDのマーク
名称は、音響機器などにおけるHi-Fi(ハイファイ「原音や原画に忠実な再現」という意味)になぞらえて名付けられたとされています。
それでは、Wi-Fi 6になったらいったいどうなるというのでしょうか。
Wi-Fi 6はWi-Fi 5よりもさらに約1.4倍速い
まずはかんたんにまとめた規格表を見ていきます。
世代と名称 | 無線LAN規格名 | 規格上の最大通信速度 | (理論値) |
---|---|---|---|
Wi-Fi 6(第6世代) | IEEE 802.11ax | 9.6Gbps | 約1.4倍 |
Wi-Fi 5(第5世代) | IEEE 802.11ac | 6.9Gbps | |
Wi-Fi 4(第4世代) | IEEE 802.11n | 600Mbps | |
第3世代 | IEEE 802.11g | 54Mbps |
このように規格上ではWi-Fi 6は、Wi-Fi 5からさらに1.4倍の速度アップを達成しました。
お気付きかと思いますが、Wi-Fi 4からWi-Fi 5への速度アップの方が目を見張るものがあります。
しかし実際はWi-Fiルーターに搭載されているアンテナ数(ストリーム数)など、製品に搭載された機能によって、最大通信速度は異なります。
9.6Gbpsは、8ストリーム時の理論値です。
通常はWi-Fi送信機のパッケージに、でかでかと記載されています。
例えば、AirStation(エアステーション)のBuffalo(バッファロー)から現在発売されているWi-Fi 6のWi-Fiルーター(無線ルーター)の一番イイヤツの「AX7」という製品の箱を見てみると次のように記載されています。
- 5GHzの電波(4ストリーム)を利用時は最大4803Mbps(約4.8Gbps)(理論値)
- 2.4GHzの電波(3ストリーム)を利用時は最大860Mbps(理論値)
ちなみにこちらは同社の現在Webサイトに掲載されているWi-Fi 5のWi-Fiルーターの一番いいヤツです。
- 5GHzの電波(4ストリーム)を利用時は最大1733Mbps(約1.7Gbps)(理論値)
- 2.4GHzの電波(4ストリーム)を利用時は最大800Mbps(理論値)
これは、お持ちの端末がWi-Fi 6に対応していて、5GHzの電波で接続すれば、かなりの速度アップが見込める可能性がありますね。
5Ghzと2.4GHzの電波
5GHzの電波
他の製品との電波干渉が少なく、つながれば安定した高速通信ができる
(アクセスポイント名の末尾や先頭に「A」が付いていることが多い)
5GHzの電波は、対応機器が少ないため電波干渉が少なく安定した通信が可能です。
しかし、障害物に弱いため壁や家具などで電波が遮られやすく、Wi-Fiルーターから離れるにつれつながりにくくなる場合があります。
なお、5GHzの電波は、実際には5.2GHz帯、5.3GHz帯、5.6GHz帯の電波が含まれますが、現在は5GHzの電波の屋外利用については、5.2GHz帯は条件付きで利用可、また、5.3GHz帯の使用は電波法で禁じられております。
2.4GHzの電波
障害物に強く対応機種が多い
(アクセスポイント名の末尾や先頭に「G」が付いていることが多い)
2.4GHzの電波は、対応機器が多いためほとんどのWi-Fi機器を接続できます。
また、5GHzの電波に比べると、障害物に強いので壁や扉越しでも電波が届きやすい特徴があります。
しかし、同じ周波数帯を使用する機器が多いため、電波干渉による速度低下が起こる場合があります。
(例えば電子レンジなど)
電子レンジに使われる周波数帯域ということは、水に吸収されやすいということです。
したがって、特に屋外利用においては、雨の日には電波が届きにくくなる可能性が十分考えられます。
(水蒸気や湿度なども)
Wi-Fiルーターによっては、端末が利用する電波をこれらの2種類から自動的に切り替えてくれる仕組みが搭載されていることもあります。
ちなみに高速なWi-Fiでは5GHz(ギガヘルツ)の電波を使用しますが、これを見て移動体通信(スマホ)の5G(ファイブジー)と混同されている方がたまにいらっしゃいます。
移動体通信(スマホ)の5Gは「5th Generation」の略で、「第5世代」移動体通信システムのことをいいます。
なお、残念ながら、高出力の電波を飛ばすためには免許等が必要になるため、家庭用のWi-Fiルーターに関して言えば出力の上限に既に達しています。
アンテナなどの工夫により、到達範囲の改善が試みられる程度ですので、目的地に届かない場合はWi-Fiルーターの設置場所の見直しや、中継器の導入を検討しなければなりません。
Wi-Fi 6で渋滞が緩和
Wi-Fi 6で、よりたくさんの端末がつながります。
同時通信が行える端末台数の最大数が、4台から8台に増えます。
冒頭でも述べた通り、今やパソコンやスマホだけでなく、ゲーム機やスマート家電のように様々な機器がWi-Fiを利用できるようになっています。
ということは、おうちのWi-Fiルーターには多くの端末が同時に接続されている状況となっていることでしょう。
基本的に情報通信は、単位時間で分割して行われるので、台数が多くなるにつれ通信の渋滞が起こることになります。
話は脱線しますが、スーパーのレジの行列を想像していただければいいでしょう。
普通、レジ1台につき、お客様を1組ずつ処理していくことになります。
なので2組目のお客様は1組目の処理が終わるまで待つことになるはずです。
そこで、レジ渋滞の緩和のために、レジの開設数を増やすという対応がとられると思います。
(並列処理)
これは大雑把に言うと、次に紹介するMU-MIMOのようなものかもしれません。
ところで、スーパーのレジでは現実にはありえませんが、1台のレジで従業員が1組目、2組目、3組目…と1秒ごとに順番に切り替えて応対できたとしたら、傍から見ればまるで同時に処理されているかの様に見えなくもなく、処理の終了する時間が平均的になったように見えます。
これを時分割といい、古くから使われている多重化技術です。図の例では、扱っている数が小さいせいで、赤や黄色がものすごく損をしているように見えてしまいますね…。
さて、既に採用されている渋滞緩和のための技術の一つに、MU-MIMOがあります。
Wi-Fi 6ではさらに改良されたMU-MIMOが使われています。
既存のMU-MIMOについては別の記事が詳しいのでそちらをご覧ください。
次にWi-Fi 6で追加された技術を見てみましょう。
これまでは、単位時間あたり、1つの周波数帯域は1つの端末で占有していました。
Wi-Fi 6では周波数帯域を分割して複数の端末に同時に割り当てられるようになります。
以下は周波数帯域利用のイメージです。
この周波数帯域を分割して利用する手法は、実はスマホのLTE(4G)などでも既に使われているそうです。
Wi-Fiは基本的に下位互換
これまでもそうだったかと思いますが、Wi-Fi 6 ルーターにも過去のWi-Fi製品はつながります。
※稀に相性などの不明な理由により、つながらない場合もあります。
ただし、Wi-Fi 4以降の高速化技術や多接続技術は、まずWi-Fiルーターにその機能が備わっていなければならないのは当然ですが、ではWi-Fiルーターを新しくしたら速くなって渋滞が起きにくくなるかというとそうでもありません。
例えば、既にお使いだったWi-Fi 4の端末をつなぐことができますが、Wi-Fi 6の速度でつながるわけではなく、Wi-Fi 4の速度でつながります。
このように利用する端末側もWi-Fi 6を搭載していなければなりません。
同様に高速化技術や多接続技術もそれぞれ内蔵していなければ恩恵は受けられません。
最後に一言
現在所有している端末にWi-Fi 6対応のものが無ければ、Wi-Fiルーターが壊れた!とか、Wi-Fiルーター持ってないのでこれから導入する!とかでなければ、今すぐWi-Fi 6 ルーターを購入する必要はないかもしれません。
むしろ型落ちで安くなったWi-Fi 5 ルーターをつなぎで購入するという手もアリかも。
そんなことより、電波の到達範囲について別の項で少し触れた程度でしたが、Wi-Fiルーターはスッキリおしゃれなヤツより、棒状のアンテナが生えているヤツのほうが明らかに電波の飛びが良いです!

スッキリおしゃれ?なヤツの例

棒状のアンテナが生えているヤツの例
筆者は、Wi-Fi 6の端末を持っていないにも関わらず、棒状のアンテナが生えているWi-Fi 4 ルーターから、どうせ買うならとスッキリおしゃれWi-Fi 6 ルーターに買い替えてみました。
1万5千円くらいケチった、とも言います。
すると、Wi-Fiルーターのそばで、5GHzの電波でつないだとき、Wi-Fi 5の端末が明らかに速くなったのを実感できました。
しかし、棒状のアンテナが生えているWi-Fi 4 ルーターでは届いていた、別の階の隅の部屋には2.4GHzの電波ですら届かなくなってしまいました。
つまり最強なのは棒状のアンテナが生えているWi-Fi 6 ルーターということです。
いいヤツは棒っていうより板みたいなアンテナが生えています。
今Wi-Fi 6 ルーターを買うなら、BuffaloのWi-Fiルーターで言うと、少々高くてもAirStation AX7が最高です!
ちなみに、3月にはさらに上位モデルのAX12が発売される予定です。
特にBuffaloの回し者ではなく、弊社がメインで販売しているWi-FiルーターがBuffaloなだけです。
以上!