印刷しようとしたら色がおかしいんだけど

これはプリンターの年末あるある話です。

今年も年賀状の季節が近づいてまいりましたので、1年ぶりにプリンターに火を入れるなんて方も少なくないと思います。

例えば、
次のような絵を印刷しようとしたら、

パソコンジョイメイト

画面上の画像の例

実際に印刷されたらこうなった。

色抜けの絵

印刷結果の例

この例では、シアンのインクが出てません。
皆さんがよく「青」というやつですね。

ここで多くの皆さんがやっちゃうのが、インクは無くなってないのにインクを交換してみるんです。
もちろんインクが無くなった表示が出た場合の話は別ですよ。

インクが無くなりました

「インクがなくなりました」の例

※後述しますが、インクを交換するのが正解の機種もあります。

簡単に言えばボールペンと同じ

ボールペンってしばらく使わないでいると、いざ書こうとしてもインクが出てこなくて書けないってことありますよね。

これはペン先のボールの見えてない側のインクが乾燥するなどして固まってしまい、書く動作をしても(ボールを転がしても)、正常にインクが流れ込んでいかないのが主な原因と考えられます。

書けなくなったボールペンは、症状が浅ければ何度か書く動作を行っているうちに書けるようになることもあれば、最悪の場合ボールペン自体を交換するか、芯を交換すればまた書けるようになります。
なかにはペン先を溶剤に浸けるなどの強引な方法を試す方もいらっしゃるかもしれませんがやめといた方がいいと思います。

突然、話が変わったように感じられますか?

インクジェットプリンターも基本的にこれと同じで、長い間使わないでいると印字ヘッド(インクを紙に噴射する部分)に充填されたインクが乾燥するなどして固まってしまい、正常にインクが流れ込まなくなります。

これがヘッドの目詰まりです。

印字ヘッドには、インク噴射ノズルが規則的に並んでおり、ある色の一部のノズルが詰まってしまった場合は、インクを噴射できなかった行の色が抜けるので規則的な縞状に見え、またある色のノズル全部が詰まってしまった場合は、その色がまったく印刷されないわけです。
ですからシアンのノズルがすべて詰まってしまうと、冒頭の色抜けの例のように印刷されるのです。

そういうわけで、仕組みはともかくインクが出てこないんだからインクを新しいものに変えたらいいんじゃないか?とお考えになることは、ごく自然なことだと思います。
もちろん筆者も仕組みを知らない時はそうでしたし、特にインクを交換したら治るタイプの機種でしたから治っちゃってたんです…。

ところが多くの場合、残念なことに、それは無駄な出費と徒労に終わるのです。

なんでインク変えたのに出てこないんだ?

インクジェットプリンターを扱う方ならどなたも一度は経験しますとも、ええ。

では何故か。ボールペンの芯で例えてみたいと思います。

多くの皆さんが所有するインクジェットプリンターは、色ごとにインクカートリッジが交換できるタイプではないでしょうか。
こんなヤツ。エプソンのインク クマノミこのタイプのプリンターは、各色のインクが独立して交換できるので便宜上「独立タイプ」と名付けることにします。

ところでインクカートリッジをプリンターにセットする時、裏を見たことはありますよね。
別のヤツですが、こういうの。エプソンのインク 70番の裏

実は、このカートリッジから用紙にインクが噴射されているわけではなく、独立タイプの印字ヘッドはプリンター本体に搭載されているのです。

一方、ボールペンの芯は、ペン先(印字ヘッド)とインクが入っている部分(インクカートリッジ)が一つの部品です。ボールペンの芯とプリンターインクの関係性

なのでボールペンは芯を新しいものに変えたらまた書けるようになります。

しかし独立タイプのプリンターは、インクカートリッジを交換してもボールペンの芯でいうインクが入っている部分が新しくなるだけで、ペン先にあたる印字ヘッドは交換されません。

これがヘッドの目詰まりはインクカートリッジを交換しても解消されない理由です。

インクジェットプリンターには普通、ヘッドの目詰まりを解消するための操作

ヘッドクリーニング」が備わっています。
※操作の詳細はプリンターの取扱説明書をご覧ください。

ヘッドクリーニングを行っても改善しない場合は、メーカー修理が必要になります。

昨今のプリンターの販売価格と修理料金の関係から、プリンターの買い替えも考慮すべき対象になります。

一体タイプ

独立タイプとは別に、一部のプリンターは印字ヘッドが組み込まれたインクカートリッジを採用するものもあります。

まさしくボールペンの芯と同じです。

そちらのタイプのプリンターを便宜上「一体タイプ」と名付けることにします。
こういうカートリッジです。
キヤノンのインク340と341

この場合、黒は1つのカートリッジですが、カラーのインクも3色合わせて1つのカートリッジになっています。
十数年前までは、このタイプのプリンターが家庭用では一般的でした。

これだと黒はともかくカラーのインクの場合、例えばマゼンタが無くなったら他の色は無くなってなくても、インクカートリッジを交換しなければならないので、なんかモッタイナイような気分になります。
家庭用プリンターに独立タイプが登場したとき、これがもったいないからというのが宣伝文句だったような気がします。

ちなみに次の写真は一体タイプのカラーのインクカートリッジの裏です。
茶色に囲まれた金色の長方形に見える部分が印字ヘッドです。
使用済みのためヘッドが汚れてしまっています。

キヤノンのインク 341番の裏

モッタイナイ気分とは別に、一体タイプはインクカートリッジを交換すれば印字ヘッドも新しくなるので、一年間放置してヘッドの目詰まりが起きてしまっていても、インクカートリッジを交換すれば治るのです。

なので一年に一回しか使わない、年賀状しか刷らないという方には、一体タイプのプリンターの方が適しているということも十分考えられます。

もちろん一体タイプのプリンターでも、ヘッドクリーニングを行って改善することもあります。


ヘッドの目詰まりは、季節などにもよりますが、早い場合1か月程度で起き始めます。

早期であれば、ほとんどの場合ヘッドクリーニングで改善しますが、半年も経っていると治らないことの方が多くなってきます。
まして一年ともなるとあまり改善の期待は持てません。

なので、定期的にお使いになるのが一番と思います。

もちろん、たくさん使用するとヘッド自体が消耗して故障に至ります。

使ったら壊れるのは当然で、使わなくてもダメになるという難儀な装置です。

というわけで、どちらのタイプのプリンターがお客様の使い方に適しているのか、プリンター購入時に検討してみるのも良いかもしれません。
とはいえ一般的に、一体タイプの現行のプリンターは、簡易的な機種であることが多いので、用途によっては適さないこともあります…。

いっそプリンターを所有しないという選択も。

プリンタのトラブル 色抜け編